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ゆかねぇ(渡邊 由佳)
Gallup認定ストレングスコーチ・社会保険労務士
愛知県西尾市在住、京都市生まれ。
強みの伝道師として、一人でも多くの方が強みを活かして自分らしく生きていけるようストレングスファインダー(クリフトンストレングス)を使ったコーチングをしています。
TOP5は 未来志向・達成欲・戦略性・最上志向・活発性。
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健康保険の被扶養者になれるのは誰?必要な要件・範囲をわかりやすく解説

こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳  (@officeyuka) です。

私も働いてるけど、主人の扶養に入れるのかしら…。
離れて暮らす両親を扶養に入れることはできないのかな…。

公的な医療保険である健康保険は、被保険者だけでなく被扶養者の病気や事故についても保険給付を行うことで、被保険者の医療費負担を軽減しています。

被保険者としては保険料の負担も自分の分だけでよく、非常にありがたい制度なものの、誰彼かまわず被扶養者になれてしまうと健康保険財政が大変なことになってしまいます。

そのため、被扶養者になれる人の要件や範囲は法律で決められているのですが、これがなかなかわかりづらい(苦笑)。

そこでこの記事では、「いったい誰が被扶養者になれるのか?」について、必要な要件や親族の範囲をわかりやすく解説していきます!

税法上でも「扶養」という言葉が出てきますが、今回のお話は健康保険(社会保険)に関するものです。まったく別物とご理解ください。
目次

健康保険の被扶養者の概要

詳細を見ていく前に、まず健康保険の被扶養者になるための要件(条件)をざっくりとお伝えします。

健康保険の被扶養者となるためには、次の2つの要件を満たすことが必要です。

  1. 日本国内に住所があること
  2. 被保険者との間に一定の身分関係・生計関係があること

身分?生計?なんのこと??

①はともかく、②の「身分関係・生計関係」で早くもつまずいてしまいそうですが、言葉の意味を簡単に説明すると次のとおりです。

  • 身分関係 : 「夫と妻」「親と子」「兄と弟」といった親族的な関係のこと
  • 生計関係 : 家計が一緒か別か、被保険者の収入によって生計が維持されているかといったこと

つまり、被保険者との関係が「夫婦」や「親子」というのが身分関係、「被保険者の収入で暮らしている」「被保険者とは完全に財布を分けている」といったことが生計関係です。

 

そして、②の「被扶養者となるために必要な、被保険者との間の身分関係・生計関係」を表にすると次のようになります。

要件(生計関係) 被扶養者の範囲(身分関係)
被保険者によって
生計を維持されている
直系尊属(父母・祖父母など)
配偶者(事実婚含む)
(実子・養子)
兄弟姉妹
被保険者によって
生計を維持されている
+
被保険者と同一の世帯
属している
⑥上記①〜⑤以外三親等内の親族
事実婚関係にある配偶者父母及び子
⑧上記⑦の配偶者の死亡後におけるその父母及び子

今の段階では「なんのこっちゃ」でも全然大丈夫。

ここから一つ一つの要件を丁寧に解説していきます。

要件① 国内居住要件

健康保険の被扶養者となるためには、まず日本国内に住所を有する(日本に住民票がある)ことが大前提です。

ただ、何がなんでも日本に住んでいなければならないかというとそうではありません。

健康保険法では例外として「海外にいても被扶養者になれる場合」「国内にいても被扶養者になれない場合」を規定していますので、順番に見ていきます。

MEMO

かつては被扶養者になるために国内居住要件はありませんでした。外国人による医療保険の不適切利用問題などを受け、令和2年4月から改正されたものです。

海外にいても被扶養者になれる場合

海外にいても(=日本国内に住所がなくても)被扶養者になれるのは次のような場合です。

  1. 外国において留学をする学生
  2. 日本から外国に赴任する被保険者に同行する家族
  3. 海外赴任中の身分変更により新たな同行家族とみなすことができる者(海外赴任中に生まれた被保険者の子供、海外赴任中に結婚した被保険者の配偶者など)
  4. 観光・保養やボランティアなど、就労以外の目的一時的に日本から海外に渡航している者(ワーキングホリデー、青年海外協力隊など)
  5. ①〜④に当てはまらなくても、渡航目的などから日本国内に生活の基礎があると認められる者

上記のような場合に被扶養者となれるのは、渡航が一時的であり、その目的も就労ではない(会社の命令で赴任するのは100%自分の意思による就労ではない)ことから、日本国内に生活の基礎があると認められるためです。

国内にいても被扶養者になれない場合

反対に、日本国内に住所を有していても被扶養者になれないのは次のような場合です。

  1. 「医療滞在ビザ」で来日した者
  2. 「観光・保養を目的とするロングステイビザ」で来日した者(富裕層を対象とした最長1年のビザ)

こちらは、国民健康保険(原則として会社員ではない方が加入する医療保険)では以前からそもそも被保険者になれなかったのですが、健康保険もそれに合わせた形です。

さきほどの考え方でいうと、上記の場合は日本国内に生活の基礎があるとは考えにくく、被扶養者にはなれないとご理解いただくと良いでしょう。

要件② 被保険者との身分関係・生計関係

さて、ここからがいよいよ本番です。

「被扶養者となるために必要な、被保険者との間の身分関係・生計関係」を見ていくことになりますので、冒頭の表をもう一度出してみます。

要件(生計関係) 被扶養者の範囲(身分関係)
被保険者によって
生計を維持されている
直系尊属(父母・祖父母など)
配偶者(事実婚含む)
(実子・養子)
兄弟姉妹
被保険者によって
生計を維持されている
+
被保険者と同一の世帯
属している
⑥上記①〜⑤以外三親等内の親族
事実婚関係にある配偶者父母及び子
⑧ ⑦の配偶者の死亡後におけるその父母及び子
生計を維持って?同一の世帯って?意味がわからん!

そう、被扶養者になれるかどうかを判断するにあたってもっとも複雑で、実際にネックともなるのがこの「生計維持要件・同一世帯要件」なのです。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

「生計を維持」とは?

健康保険の被扶養者になるためには、被保険者によって生計を維持されていることが絶対条件です。

この「生計を維持」とは生計の基礎を被保険者に置いていることを言うのですが、これだけではなんのことかさっぱりわかりません。

そのため、具体的に被扶養者として認定されるための年間収入の基準が次のように示されています。

被保険者と同一の世帯に
属している
場合
被保険者と同一の世帯に
属していない
場合
60歳未満の方

①本人の年収が130万円未満

かつ

②被保険者の年収の2分の1未満

①本人の年収が130万円未満

かつ

②被保険者の援助額より少ない

60歳以上または
障害者の方

①本人の年収が180万円未満

かつ

②被保険者の年収の2分の1未満

①本人の年収が180万円未満

かつ

②被保険者の援助額より少ない

「130万円の壁」という表現を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、それはこの基準額から来ています。

上記の「年間収入」ですが、様々な控除をした後の「手取り額(所得)」ではなく、控除前のいわゆる「額面(収入)」で考えます。

また給与以外でも、年金資産所得など継続して入るものは収入となり、いわゆる失業保険なども収入とみなされますので注意が必要です。

MEMO

この収入基準は厳格で画一的なものではなく、被扶養者としての認定を受けようとする方の年収が130万未満(または180万未満)であって、被保険者の年収を上回らなければ、総合的に判断して被扶養者と認められることもあります。

また、この基準を用いることで実態と著しくかけ離れ、一般的に考えて妥当でないと認められる場合には、具体的な事情に照らして最も妥当な判断をするともされています。

「同一の世帯に属する」とは?

健康保険の被扶養者となるために、一定の場合には被保険者と同一の世帯に属することが必要となります。

この「同一の世帯に属する」とは、被保険者と住居及び家計を共同にすることを言います。

そのため、被保険者と同一の戸籍内にあるかどうかは関係なく、また被保険者が世帯主である必要もありません。

噛み砕いて言うと、一つ屋根の下で暮らし、同じ財布で生活していれば「同一の世帯に属している」と言えるということです。

こんなときはどうなる?

病院への入院や単身赴任などは一時的な別居と考えられるため、同一の世帯に属するものとされています。

ですから、被扶養者としての認定が取り消されたりということはありません。

生計維持関係のみで被扶養者になれる場合

「生計維持要件」と「同一世帯要件」をご理解いただけたら、あと一息です。

まず、親族の中でも被保険者によって生計を維持されている(生計維持要件を満たしている)だけで被扶養者となれる場合があり、それは次のとおりです。

  1. 直系尊属
  2. 配偶者
  3. 兄弟姉妹

上記の範囲内に該当する親族であれば、たとえ別居していても被保険者によって生計を維持されている限り被扶養者になることができます。

ただし、後期高齢者医療の被保険者(原則として75歳以上)は、たとえ被保険者に生計を維持されていても被扶養者となることはできません。

若干細かくなりますが、一つひとつの関係について注意すべき点があるので見ていきます。

①直系尊属

直系尊属とは、父母・祖父母など被保険者の真上の世代のことを言います。

父母には養父母(養子縁組をした父母)も含まれるため、極端なことを言えば養父母と実父母の両方を被扶養者とすることも可能です。

それとは異なり、父または母の配偶者(養子縁組をしていないいわゆる継父母)は直系尊属とはみなされず、後述する三親等以内の親族となります。

②配偶者

配偶者には、届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者(いわゆる事実婚)を含みます。

③子

子とは、実子及び養子のことを言います。

そのため、配偶者の子(養子縁組をしていないいわゆる継子)は後述する三親等内の親族となります。

④孫

孫には、ひ孫は含まれません。

生計維持関係+同一世帯で被扶養者になれる場合

最後に、親族の中で被保険者によって生計を維持されているだけでは足らず、同一の世帯に属して初めて被扶養者となれる場合があります。それは次のとおり。

  1. 生計維持関係のみで被扶養者になれる者を除いた三親等内の親族
  2. 事実上の婚姻関係にある配偶者の 父母及び子
  3. 上記の配偶者の死亡後におけるその 父母及び子

この中で範囲がわかりにくいのは、三親等内の親族かと思います。

民法上では親族の範囲はもっと広いのですが、健康保険の被扶養者となるためには被保険者の三親等内の親族である必要があります。

で、三親等内って誰まで?

そうなりますよね。

この点については文章よりも図の方がわかりやすいので、全国健康保険協会様から図をお借りしました(船員保険のページですが、三親等内の親族については同じです)。

図で言うと、四角で囲んだ色付きの親族が生計維持要件のみで被扶養者となることができ、だ円で囲まれた親族(三親等内の親族)は同一世帯の要件も満たさなければならない、ということになります。

まとめ

「扶養に入れるか入れないか」というのは、どうしても保険料負担の面から気にしてしまいがちですが、実際に病気や怪我をしたときの負担を考えても大きなポイントです。

ぜひご家族のために、最適な選択をしていただければと思います。

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