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ゆかねぇ(渡邊 由佳)
Gallup認定ストレングスコーチ・社会保険労務士
愛知県西尾市在住、京都市生まれ。
強みの伝道師として、一人でも多くの方が強みを活かして自分らしく生きていけるようストレングスファインダー(クリフトンストレングス)を使ったコーチングをしています。
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標準報酬月額の随時改定とは?「3つの要件」を図表を用いて丁寧に解説

こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳 (@officeyuka) です。

あれ?標準報酬月額って1年間同じじゃなかったっけ?

会社が毎月納める 社会保険料 を計算する際に必要となる標準報酬月額は、基本的には毎年7月に決定した額を1年間用います。

ところが、被保険者である従業員の方々のお給料はずっと同じではありません。ときには大幅に昇給・降給することもあります。

そんな場合に 標準報酬月額 がそのままだと、控除するべき社会保険料を控除できなかったり、反対に控除しすぎてしまったりと、従業員の方にも会社側にも負担がかかってしまいます。

そこで!社会保険には、お給料の額が大幅に増減した場合に、7月の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定できる随時改定という制度が設けられているのです。

この記事では、随時改定についてどんなときにどのように改定していくのかを丁寧に解説していきます。

随時改定は、提出する書類の名前である「月額変更(届)」や「月変(げっぺん)」と呼ばれたりすることもありますが、同じものとお考えください!

関連記事▶︎標準報酬月額とは?社会保険料計算の基礎となる標準報酬月額についてわかりやすく解説

関連記事▶︎毎年1回必ず実施!標準報酬月額の定時決定(算定基礎届)について詳しく解説

目次

随時改定が行われるための要件

給料がちょっとでも増えたり減ったりしただけで標準報酬月額を改定しなきゃいけないのかねぇ…。

まず、そもそもなぜ 標準報酬月額 というものを使うのかいうと「毎月細かく変動する給与にあわせて社会保険料を計算するような煩雑な事務処理を避けるため」です。

そのため、なんでもかんでも随時改定というわけでは決してありません。

では「いつ標準報酬月額の随時改定を行わなければいけないか?」ですが、次のすべての要件を満たしたときです。

  1. 昇給・降給によって固定的賃金に変動があった
  2. 固定的賃金の変動があった月以後の継続した3ヶ月間の報酬支払基礎日数すべて17日以上
  3. 「②の3ヶ月間に受けた報酬の平均額による標準報酬月額」と「固定的賃金が変動する前の標準報酬月額」との間に2等級以上の差が生じた

わーかーりーまーせーーん!

わかりませんよね…、ごもっともです。

1つずつ解説していきますね。

① 固定的賃金が変動

標準報酬月額の随時改定が行われるためには、なにかしら賃金額の変動がなければいけませんが、変動が必要なのは固定的賃金です。

固定的賃金?凹○コテッ(言いたかっただけ)

固定的賃金とは、読んで字のごとく毎月固定され、決まった額が支給される賃金のことで、具体的にいうと 基本給・役職手当・家族手当・役職手当・住宅手当・通勤手当などです。

そして、この固定的賃金に変動がないかぎり随時改定は行われません。

ですから、たとえば昇給や昇進があったときや、「子供が生まれた」「引っ越した」といったイベントがあったときなどに固定的賃金の変動があり、随時改定が行われる可能性が出てくるということです。

ちなみに非固定的賃金(毎月変動する賃金)は、残業手当・皆勤手当・宿直手当・歩合給など。

非固定的賃金はそもそも毎月変動するのが前提の賃金ですから、変動があったところで随時改定は行われない、というわけなんですね。

食事や住居そのものといった現物給与も固定的賃金に含まれますのでご注意ください!

② 報酬支払基礎日数がすべて17日以上

続いて、標準報酬月額の随時改定が行われるためには、固定的賃金の変動があった月を含めた3ヶ月間の報酬支払基礎日数がすべて17日以上である必要があります。

報酬支払基礎日数とは、報酬を支払う対象となった日数のことで、月給制なら暦日数、日給制や時給制なら出勤日数そのものを指します。

そして、その日数が3ヶ月間すべて17日以上でなければ随時改定は行われないのですが、 なぜそこまで「すべて」にこだわるのかというと、年1回行われる定時決定と大きく異なる点だからです。

以下で表にしました。

定時決定 4,5,6月の3ヶ月間に、報酬支払基礎日数が17日未満の月があれば、その月を除いて計算する(=17日以上の月が1ヶ月でもあるかぎり定時決定は行われる)。
随時改定 対象となる3ヶ月間に、1ヶ月でも報酬支払基礎日数が17日未満の月があれば、そもそも随時改定は行われない

定時決定の場合、たとえ報酬支払基礎日数が17日未満の月があったとしても、その月を除いて計算するのに対し、随時改定の場合は改定そのものを行わないという違いがあります。

関連記事▶︎毎年1回必ず実施!標準報酬月額の定時決定(算定基礎届)について詳しく解説

また、 「随時改定を行う際に対象となる3ヶ月間」とは、固定的賃金の変動があった月を含めた3ヶ月間です。

文字ではわかりにくいので図でご説明しますね。

この例では、9月分の給与で固定的賃金の基本給が上がり、上がった分が10月に支給されています。

そして、ここが間違えやすいのですが「固定的賃金に変動があった月」というのは支給された給与に変動があった月」のことです。

そのため、10月からの3ヶ月間が対象となる、というわけです。

③ 2等級以上の差

標準報酬月額の随時改定は「固定的賃金が変動した以後の3ヶ月間に受けた報酬の平均額による標準報酬月額」と「固定的賃金が変動するの標準報酬月額」との間に2等級以上の差がなければ行われません

等級は、次のような標準報酬月額等級表で確認することができます。

また「いつといつの標準報酬月額を比較するのか?」についてですが、解説のために先ほどの例をもう一度出してみます。

この図を見ると、10月に支給された賃金から固定的賃金が変動していますから、比較する標準報酬月額は次のようになります。

そして非常に重要な点ですが、「3ヶ月間に受けた報酬の平均額」は残業手当などの非固定的賃金もすべて含めて計算します。

つまり「固定的賃金の変動がなければそもそも随時改定は行われないが、2等級以上の差があるかどうかを見るときは、給与として支払ったすべてのものを含めて計算する」ということです。

1等級の差でも随時改定を行う場合

「第1級⇆第2級」「第49級⇆第50級」のように、等級表の上限や下限前後の方に固定的賃金の変動があった場合は、たとえ1等級しか差が生じなかったとしても随時改定が行われます。

随時改定による標準報酬月額の改定時期

無事随時改定の要件を満たすと 標準報酬月額 が改定されるわけですが、改定のタイミングは報酬月額に著しく高低を生じた月の翌月からです。

それは…日本語ですか?イミワカラン。

これも図でご説明した方がわかりやすいので、今までの例を再度出しますね。

「著しく高低を生じた月」というのはただの条文上の言い回しですので、変動した固定的賃金支払われた月から数えて4ヶ月目(例では1月)」から標準報酬月額が改定されるとご理解ください。

随時改定された標準報酬月額の有効期間

随時改定された標準報酬月額は、改定された時期によって有効期間が異なります。

  • 改定月1月から6月までの場合→その年の8月まで
  • 改定月7月から12月までの場合→翌年の8月まで

基準は「改定月」です。そのため、たとえば「固定的賃金が変動した月」などが基準とはならないことにご注意ください。

随時改定の手続き

標準報酬月額の随時改定は、管轄の年金事務所または健康保険組合に届出をすることで行います。

届出時期

随時改定の届出は、変動した賃金が支払われた月から3ヶ月目の給与が支払われたあと速やかに行います。

「速やかに」って、なんかビミョー…。

「速やかに」は日常でも使いますが、法律上は「できるだけ早く」という意味です。

私も「できるだけ早くお願いします」としかお伝えできません…。

届出用紙

随時改定の際に届け出る用紙は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」です。

実際の書類は次のようなものです。

同じ時期に随時改定を行う従業員が複数いる場合、5名までなら同じ用紙で届け出ることが可能です。

まとめ

ここまで、標準報酬月額の随時改定が行われるための3つの要件を丁寧に見てきましたが、最後にもう一度まとめておきます。

随時改定が行われるための要件

  1. 昇給・降給によって固定的賃金に変動があった
  2. 固定的賃金の変動があった月以後の継続した3ヶ月間の報酬支払基礎日数すべて17日以上
  3. 「②の3ヶ月間に受けた報酬の平均額による標準報酬月額」と「固定的賃金が変動する前の標準報酬月額」との間に2等級以上の差が生じた

標準報酬月額の随時改定は、全従業員分を一斉に行うものではないため、ともすると忘れがちなものです。

きちんと記録しておく、3ヶ月後にアラートが鳴るようにしておくなど、自社に合った「手続きを忘れないための工夫」をしていただき、確実な対応をしていただければと思います。

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