非常災害時の時間外労働等に係る許可基準の改正についてわかりやすく解説

こんにちは、 渡邊 由佳 ( @officeyuka )  です。

時間外労働 や 休日労働 は原則として禁止されていますが、非常災害時には 行政官庁の許可 を受けることにより適法に 時間外労働 や 休日労働 をさせることができます。

そして今回、この非常災害時に 時間外労働 や 休日労働 が許可される基準が一部改正される通達が出されました。

そこでこの記事では、許可基準のいったい何がどう変わったのか?留意する点は?について、労働基準法の解釈も踏まえながら詳しく解説します。

現代に即した許可基準に改正された、と思っていただければOKです!

非常災害時の時間外労働等とは?

非常災害時の時間外労働等に係る許可基準の改正内容の前に、まずは時間外労働 や 休日労働 についての基本をお伝えします。

時間外労働・休日労働の原則と例外

労働基準法では原則として、週40時間・1日8時間を超える時間外労働は禁止されており、また、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています。

しかし、時間外労働や休日労働が一切認められないとなると、企業の経済活動に支障をきたしてしまいますよね。

そこで、労働基準法では次の3つの場合には適法に時間外労働又は休日労働をさせることできると認められています。

  1. 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合(非常災害時)
  2. 公務のために臨時の必要がある場合(公務員の場合)
  3. 労使協定(36協定)の締結・届出をした場合

そして、今回の許可基準の改正は①の非常災害時のみにかかることです。

非常災害時の時間外労働等には許可が必要

非常災害時だからといって、なんでもかんでも時間外労働や休日労働をさせていいわけではありません。

ここで、非常災害時の時間外労働等について書かれた条文をご紹介します。

<労働基準法第33条1項>

災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。

ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

e-Govより引用

簡単に言うと、非常災害時に時間外労働等が認められるためには行政官庁の許可が必要なのです。

ただし、事態が急迫していてどうしても行政官庁の許可を受けることができなかった場合は、事後に遅滞なく届け出ればOKなんですね。

注意
事後に届け出た場合、行政官庁がその時間外・休日労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを命ずることができますので注意が必要です(労働基準法第33条第2項)。

36協定の締結は不要

本来、時間外・休日労働をさせるためには労使協定(36協定)の締結・届出が必要です。

しかし、非常災害時行政官庁の許可があれば36協定の締結・届出をしていなくても時間外・休日労働をさせることができます。

非常事態にそんな悠長なことしている暇はありませんからね。

ただし、災害などの発生から相当程度の時間が経過し、臨時の必要がなくなってもなお時間外・休日労働をさせる場合には、36協定の締結・届出が必要ですのでご注意ください。

割増賃金の支払いは必要

たとえ行政官庁から許可を得たとしても、その労働はあくまでも時間外労働や休日労働です。

時間外労働や休日労働については、割増賃金の支払いが義務づけられていますのでご注意ください。

許可基準改正のポイント

それではいよいよ、非常災害時の時間外労働等に係る許可基準の改正について解説していきます。

今回の改正のポイントは次の2つです。

  1. 現代的な事象等を踏まえて解釈の明確化を図るものであること
  2. 旧許可基準及び関連通達で示している基本的な考え方に変更はないこと

実は、旧許可基準は 70年 近く前(!!)に出された通達に書かれているものです。

70年も経てばいろんなことが大きく変わっています。そのため、現代に合わせて基準を明確にしたというのが改正の最大のポイントとなっています。

付随業務も含まれる

新許可基準による許可の対象には、災害その他避けることのできない事由に直接対応する場合加えて、当該事由に対応するに当たり、必要不可欠に付随する業務を行う場合が含まれます

例えば、ある会社で災害に直接対応する社員のために、総務部門が食事や寝具の用意をしたりする場合も許可の対象となる、ということです。

あくまでも例示

新許可基準は、「解釈の明確化を図る」ことがポイントであるために具体的な事項が多く定められていますが、これらはあくまでも例示であって限定列挙ではありません(書かれたものしか認めないわけではない、ということ)。

そのため、新許可基準に書かれていない事案であっても「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」と認められる場合があるということです。

許可基準の改正内容と留意点

続いて、非常災害時の時間外労働等に係る許可基準の改正内容と留意点を各項目ごとに見ていきます。

①単なる業務の繁忙等では認められない

「非常災害時」とは、あくまでも災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定です。

そのため、単なる業務の繁忙や、これに準ずる経営上の必要といった理由では許可されません

この許可基準については、これまでとまったく変更はありません。

②「人命又は公益を保護するための必要」について

旧許可基準では簡潔に書かれていた「人命又は公益を保護するための必要」という許可基準が、より明確かつ具体的に示されました。

こちらについては、通達文を載せた方がわかりやすいので全文掲載します(青字部分が改正箇所です)。

地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認めること。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれること。

令和元年6月7日 基発0607第1号 より引用

かなり詳しく、具体的に書かれていることがおわかりいただけるでしょうか。

これはおそらく、近年の大規模災害によるライフラインの甚大な被害を受け、対応を明確化したものと思われます。

留意点

この項目で留意すべきことは、「ライフライン」には電話回線やインターネット回線等の通信手段が含まれているという点です。

また、「雪害」については、道路交通の確保等 人命又は公益を保護するために除雪作業を行う臨時の必要がある場合 が該当します。

③サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応について

非常災害時の時間外・休日労働が許可される基準としてサーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応も含まれることが明確に示されました。

こちらも通達文を掲載します(青字部分が改正箇所です)。

事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、 保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれること。

令和元年6月7日 基発0607第1号 より引用

これはまさに現代に即した改正部分と言えます。

④他の事業場からの協力要請に応じる場合について

他の事業場からの協力要請に応じる場合 においても、「人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合」や「協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合」には許可すべきことが明確化されました。

この一文は旧許可基準にはなく、改正によって追加されたものです。

留意点

「他の事業場からの協力要請に応じる場合」については、国や地方公共団体からの要請も含まれます

例えば、災害発生時に国の依頼を受けて避難所へ物資を緊急輸送する業務は許可の対象となります。

まとめ

今回出された 非常災害時の時間外労働等に係る許可基準の改正 は、生活環境の変化 や 自然災害の多様化 といった現代的な事象を踏まえたものです。

しかし、あくまでも臨時の必要がある場合 に 必要な限度 においてのみ許可されるものですので、制度の趣旨を理解し、適切な利用を心がけていただきたいと思います。

 

参考文献

厚生労働省:災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正について(令和元年6月7日 基発0607第1号)

厚生労働省:災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る 許可基準の解釈に当たっての留意点について(令和元年6月7日 基発0607第1号)