こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳 (@officeyuka) です。
仕事の合間の休憩時間。待ち遠しいものです。
でも、そんな休憩時間についても労働基準法で様々な規定が設けられていることをご存知でしょうか。
この記事では、労働基準法に定められた休憩時間の規定を基本ルールと3つの原則に沿って丁寧に解説します。
休憩時間の基本ルール
まず、そもそも休憩時間とはどういう時間のことでしょうか。
休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間のことを言います。
そのため、次のような時間は使用者の指揮命令から完全には解放されていない(手待時間と言う)ため、休憩時間とはみなされません。
- 昼食休憩中に命じられて来客当番をする時間
- 貨物の積込係が貨物の到着まで待機している時間
- 2人勤務のトラックで、運転しない者が助手席で休息や仮眠をする時間
そのとおりです。
手待時間は労働時間のため、賃金を支払わなければならないのはもちろん、手待時間も含めると法定労働時間を超える場合には、割増賃金の支払いも必要になります。
反対に、休憩時間は労働時間ではありませんので、賃金を支払う義務も当然ありません。
法定労働時間・割増賃金については、次の記事も参考にしてください。
休憩時間の長さ
休憩時間は、1勤務日あたりの労働時間 によって与えなければならない時間が異なります。
労働時間(1勤務日あたり)の長さ | 付与すべき休憩時間 |
6時間 | 不要 |
6時間を超え8時間以下 | 少なくとも45分 |
8時間超 | 少なくとも1時間 |
そうなのです。
労働基準法上、労働時間が8時間を超えた以降はたとえどれだけ長い時間働いたとしても、休憩時間は1時間与えれば良いとされています。
休憩時間の原則① 途中付与の原則
休憩時間の基本ルールをお伝えしたところで、ここからは休憩時間に関する3つの原則をお伝えしていきます。
まず一つ目に、休憩時間は労働時間の途中に与えなければなりません(途中付与の原則)。
たとえば、出社直後や退社間際などに休憩を与えてはいけないということです。
特例① 休憩の適用除外
休憩に関する特例として、次の者には休憩時間そのものを与えないことができます。
- 運輸交通業・郵便通信業において列車、船舶、航空機等に乗務する長距離乗務員
- 屋内勤務者30人未満の日本郵便株式会社の営業所において郵便の業務に従事する者
- 上記①に該当しない者のうち、業務の性質上休憩時間の付与ができないと認められ、かつ勤務中の停車時間などの合計が休憩時間に相当する者
休憩時間の原則② 一斉付与の原則
次に、休憩時間はひとつの事業場の全労働者に一斉に与えなければなりません(一斉付与の原則)。
ただし、労使の間で協定(労使協定)を締結した場合、休憩時間を一斉に与える必要はありません。
特例② 一斉付与の原則の適用除外
一斉付与の原則に関する特例として、次の者には休憩時間を当然に一斉に与える必要がありません。
つまり、労使協定の締結がなくても交替勤務が可能ということです。
- 運輸交通業
- 商業(物品販売等)
- 金融・保険・広告業
- 映画制作・演劇業
- 郵便通信業
- 保険衛生業
- 接客娯楽業
- 官公署の事業
休憩時間の原則③ 自由利用の原則
3つ目は、休憩時間は自由に利用させなければなりません(自由利用の原則)。
この「自由」ですが、なんでもかんでも自由というわけではなく、休憩時間の利用について規律保持上必要な制限を加えても、休憩の目的を損なわない限り差し支えありません。
たとえば、次のような場合は自由利用の原則に反しないとされています。
- 企業秩序維持のために、休憩時間中の政治的ビラ配布に必要な制限を加えること
- 事業場内で自由に休憩できる場合に、休憩時間中の外出を許可制とすること
特例③ 自由利用の原則の適用除外
自由利用の原則に関する特例として、次の者には休憩時間を自由に利用させる必要がありません。
これは、業務の性質上自由利用を期待することが困難なためです。
- 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
- 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
- 居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者(同一の居宅において、一の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く。)
上記の適用除外者のうち、②に該当する者だけはあらかじめ所轄労働基準監督署長の許可を受ける必要があります。
まとめ
休憩時間は、労働者の健康を守ると同時に労働生産性を維持するためにとても大切な時間です。
しかし、闇雲に長い休憩時間は結果的に労働者を長く拘束することにもなりますし、必ずしも必要なものでもありません。
この記事で解説した労働基準法の規定を守りつつ、自社に合った休憩時間の運用をしていただければと思います。