会社にお勤めの場合、会社が手続きをしてくれて気がつけば保険証が届き、保険料は毎月の給与から天引きされていた、というパターンがほとんどかと思います。 ところが会社を退職後は、各種ある公的な医療保険の中から自分で選択して加入しなければ、全額負担で医療を受けなければならなかったり、受けられるはずの給付が受けられなくなってしまいます。 そこでこの記事では、会社を退職後の公的な医療保険の選択肢の一つである健康保険の任意継続被保険者について、加入するメリットや要件、保険料についてなどを隅から隅まで解説していきます!会社を退職することになったけど、医療保険はどうすればいいんだろう…。
これから会社を退職される方だけでなく、退職する従業員に説明が必要な労務担当の方もぜひ参考になさってください!
目次
健康保険の任意継続被保険者とは?
まず最初に、健康保険の任意継続被保険者とはどのような制度なのかということをご説明します。 健康保険はいわゆる会社に勤めている方(とその家族である被扶養者)のための医療保険であり、本来であれば会社を退職すれば加入し続けることはできず、国民健康保険に加入することになります。 ところが実際には、退職後に国民健康保険に加入すると保険料が高額になったり給付内容が不利となる場合があります。 そこで、健康保険の被保険者資格を喪失したあとでも引き続き2年を限度に健康保険の適用を受けることができる制度が設けられており、これを任意継続被保険者と呼んでいるのです。つまり、会社を退職後も一定期間自分の意思(任意)で退職前の健康保険に継続して加入している被保険者ということですね!
任意継続被保険者になるメリット・デメリット
次に、健康保険の任意継続被保険者となった場合に、他の退職後の公的な医療保険と比較してどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきます。任意継続被保険者になるメリット
健康保険の任意継続被保険者になった場合、次のようなメリットがあります。保険料が国民健康保険より安く済むことが多い
任意継続被保険者になると保険料は全額自己負担となりますが、それでも国民健康保険の保険料と比較すると低額で済むことがかなり多いです。 国民健康保険の保険料は前年の所得を元に計算されるのですが、その計算方法は非常に複雑で、かつ計算方法・割率・賦課方式などが各市区町村によってすべて異なるため一概に言うことはできません。 ただ、私自身かつて退職する前に市役所で保険料の試算をしてもらった際、びっくりするぐらい国民健康保険の保険料の方が高かった記憶があります。 お住まいの市区町村の窓口に行けば保険料の試算をしてくださいますので、ぜひ一度国民健康保険の保険料も確認していただいた上でご検討されることをおすすめします。市区町村によってはホームページ上に試算できるシートを掲載しているところもあります。そちらもご活用ください!
被扶養者は被扶養者のまま
保険料の話にも関係してくるのですが、健康保険に加入していたときに被扶養者であったご家族は任意継続被保険者になっても被扶養者のままで保険給付を受けることができます。 これは、国民健康保険の場合「被扶養者」という概念がなく、家族一人ひとりが「被保険者」となる(=保険料がかかる)のとは大きく異なる点です。 任意継続被保険者となる際に生計維持関係を証明する書類等の添付が必要にはなりますが、被扶養者に関しては保険料はかからないので大きなメリットと言えるでしょう。退職前とほぼ変わらない保険給付が受けられる
他の医療保険と同様、任意継続被保険者になっても退職前とほぼ変わらない保険給付を受けることができます。 制度上受けることができないものには傷病手当金と出産手当金だけ。 それでも、在職中から傷病手当金か出産手当金の給付を受け、一定の要件を満たしていた場合は任意継続被保険者となっても引き続き給付を受けることができるので安心です。▎MEMO
傷病手当金と出産手当金の資格喪失後の継続給付は、要件を満たしていれば国民健康保険に加入してもご家族の扶養に入っても引き続き給付を受けることができます。任意継続被保険者しか受けられないわけではありませんのでご安心ください。任意継続被保険者になるデメリット
健康保険の任意継続被保険者になった場合、次のようなデメリットがあります。最長で2年間しか加入できない
健康保険の任意継続被保険者は、資格を喪失した日(退職日の翌日)から最長で2年間しか加入することができません。 2年の間に別の会社に就職したりすれば特に問題はないのですが、いつまでも任意継続被保険者で居続けることはできないという点には注意が必要です。保険料は変わらない
健康保険の任意継続被保険者の保険料は、退職した時点で決定され2年間そのままです。 これがなぜデメリットかと言うと、任意継続被保険者であるということは別の会社に就職していないということであり、収入が事実上ないわけですから、だんだん保険料の支払いが苦しくなってくる可能性があるためです。 会社を退職後、当面会社勤めをする予定がないなどの場合は、頭に置いておいていただければと思います。保険料は保険料率の改定、介護保険制度の変更等により若干の変動がありますが、基本となる金額は変わらないとご理解ください。
理由によっては途中でやめることができない
健康保険の任意継続被保険者は、次の2つの理由では途中でやめることができず、原則として2年間資格を継続しなければなりません。▎任意継続被保険者を途中でやめられない場合
- 国民健康保険に加入したとき
- ご家族の健康保険に加入(扶養に入った)とき
▎任意継続被保険者の資格を喪失する場合
- 就職して新たに健康保険等の資格を取得したとき
- 保険料を納付期限までに支払わなかったとき
- 後期高齢者医療の被保険者となったとき(75歳になったとき)
- 死亡したとき
任意継続被保険者になるために必要な要件
健康保険の任意継続被保険者は会社を退職すれば誰でもなれるわけではなく、いくつかの要件があります。 その要件は次の通りです。- 退職などのために被保険者の資格を喪失したこと
- 資格喪失日の前日まで継続して2ヶ月以上被保険者であったこと
- 資格喪失日から20日以内に保険者に申し出ること
- 船員保険 または 後期高齢者医療 の被保険者でないこと
要件① 退職などのために被保険者の資格を喪失
任意継続被保険者となるためには、まず退職などの理由で被保険者の資格を喪失している必要があります。 これは、通常であれば会社を退職すれば当てはまる方がほとんどなのですが、とても細かく言うと次のようなポイントがあります(読み飛ばしていただいてもけっこうです)。適用事業所である会社を退職している必要がある
適用事業所というのは、ざっくり言うと要件を満たせば法律上当然に健康保険の適用を受ける会社のことであり、法人や一定の個人経営の会社などが当てはまります。 つまり、任意継続被保険者となるためにはそもそも健康保険の適用を受けている会社を退職していなければならない、と考えていただくとよいでしょう。 適用事業所についてもっと知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
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自分自身が適用除外者に該当した場合もOK
適用除外者というのは、適用事業所で働いているが「他の医療保険の適用を受ける」「手続き等が困難」などの理由で被保険者になれない方のことを言います。 ということは、当初は被保険者だったがなんらかの理由で健康保険の適用が除外され被保険者でなくなった場合も、任意継続被保険者になることができるというわけです。 「どのような場合に健康保険の適用除外者に該当するのか」については、以下のリンクから詳しく知ることができます。 関連▶︎健康保険の被保険者にそもそもなれない場合任意適用事業所の取り消しはNG
これは本当にレアケースです。 任意適用事業所(本来適用事業所でないが認可を受けて適用事業所になったもの)が「やっぱりや〜めた」となった場合、適用事業所でなくなることは制度上可能です。 これを「任意適用事業所の取り消し」と言い、被保険者であった方々も同時に被保険者資格を喪失するのですが、このパターンの場合は任意継続被保険者になることはできません。 同じように被保険者資格を喪失しているものの、「任意に資格を喪失したのにもう一度任意に加入するのはおかしいでしょ?」という考え方だとご理解いただくと良いでしょう。 任意適用事業所についても、より詳しく知りたい方は以下のリンクからどうぞ。 関連▶︎健康保険の任意適用事業所とは?要件② 資格喪失日の前日まで継続して2ヶ月以上被保険者
次に、任意継続被保険者になるためには資格喪失日の前日まで継続して2ヶ月以上被保険者である必要があります。 資格喪失日 とは 退職日の翌日 のことなので、要するに「資格喪失日の前日=退職日当日」と考えてください。 そしてこの要件でもっともご注意いただきたいのは2ヶ月以上というのは継続していなければならず、通算では足りないということです。 具体的に継続していると認められる例と認められない例を挙げてみます。▎継続と認められる例
- 同じ会社で2ヶ月以上働いていた場合
- 退職したときの会社で2ヶ月以上働いていなくても、前職から1日の空白もなく転職し、合算して健康保険の被保険者としての期間が2ヶ月以上あった場合
▎継続と認められない例
- 退職したときの会社で2ヶ月以上働いておらず、前職からの転職時に1日以上の空白があった場合
- 2ヶ月のあいだに任意継続被保険者・日雇特例被保険者・共済組合の組合員である被保険者であった期間がある場合
要件③ 資格喪失日から20日以内に保険者に申し出
任意継続被保険者になるためには資格喪失日から20日以内に保険者に申し出をする必要があります。 資格喪失日は前述のとおり退職日の翌日であり、その日から20日以内に自分で申し出をしなければなりません。 申し出は郵送でも受け付けてもらえますが、20日以内に必着なのでご注意ください。 また、申し出る先の保険者というのは退職前に加入していた健康保険を管理・運営していた団体のことで、全国健康保険協会(協会けんぽ)か会社独自の健康保険組合のどちらかです。提出先(=保険者)については、会社の担当者の方に聞いても良いですし保険証にも記載がありますのでご安心ください!
要件④ 船員保険または後期高齢者医療の被保険者でない
最後に、任意継続被保険者となるためには船員保険または後期高齢者医療の被保険者でない必要があります。 船員保険はいわゆる船に乗る方が入る医療保険の一種であり、より手厚い保護がされているので任意継続被保険者にはなれません。 また、後期高齢者医療は原則的に75歳以上の方が強制的に被保険者となるので、任意継続被保険者となる余地がありません。健康保険の任意継続被保険者となるための要件まとめ
項目が長くなってしまったので、まとめとして再度健康保険の任意継続被保険者となるための要件を載せておきます。- 退職などのために被保険者の資格を喪失したこと
- 資格喪失日の前日まで継続して2ヶ月以上被保険者であったこと
- 資格喪失日から20日以内に保険者に申し出ること
- 船員保険 または 後期高齢者医療 の被保険者でないこと
任意継続被保険者になるための手続方法
任意継続被保険者となるための要件を満たせば、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に自分で手続きをする必要があります。 その手続き方法は、全国健康保険協会と健康保険保険組合ごとで必要な書類や方法が異なってきますので、該当する団体にお問い合わせいただくのが一番かと思います。 ちなみに、全国健康保険協会(協会けんぽ)については下記から必要な書類をダウンロードできますのでご活用ください。 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat240/協会けんぽでの手続きは郵送が原則です。前述したようにくれぐれも期限だけはご注意ください!
任意継続被保険者の保険料
会社勤めをしている間は保険料は会社と被保険者の間で折半して負担しますが、任意継続被保険者になると保険料は全額自己負担になることは再三申し上げているとおりです。 ここからは任意継続被保険者の保険料について詳しく見ていきます。保険料の決定方法
まず任意継続被保険者としての保険料はどうやって決まるかですが、次の2つの額のうち少ない方の額に保険料率をかけることで決定されます。- 被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額
- 30万円(協会けんぽ・令和2年度の場合。健康保険組合の場合は組合ごとに上限額は異なる。)
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保険料の納付期限
次に任意継続被保険者の保険料の納付期限ですが、毎月10日(土日祝日等で金融期間が休みのときはその翌日)です。 ただし初めて保険料を納付する場合は、申し出をした日時によって納付期限が異なるため注意が必要です(送られてくる書類や納付書をご確認ください)。 この納付期限、実はものすごく重要で厳密です。 なぜなら1日でも納付期限を遅れてしまうとその瞬間に任意継続被保険者としての資格を失うこととなり、再度継続することができなくなってしまうからです。 任意継続被保険者の資格を失ってしまうと公的な医療保険に何も入っていない状態となり、万が一怪我や病気になったときは本当に大変なことになります。 納付期限だけは必ず守るようにしていただきたいと思います。もし初回の保険料を納付しなかった場合、最初から任意継続被保険者にならなかったものとみなされるため、退職直後から何も医療保険に入っていないことになってしまいます。こちらもご注意ください!
保険料の納付方法
任意継続被保険者の保険料は、毎月初めに送られてくる納付書で銀行・郵便局・コンビニエンスストアなどから納付することができます。 また、任意継続被保険者としての期間が長くなることが予想されるのであれば、口座振替による納付も可能です。 ただし口座振替の開始には時間がかかるので、それまでは納付書での納付となりますから納付期限だけはご注意ください。最近ではPay-easy(ペイジー)などでの支払いも可能になっている場合もあります。ぜひ納付書をご確認ください!
保険料の前納
通常の健康保険と違って、任意継続被保険者の保険料は前納(期限前に一括して納付すること)ができます。 前納ができる期間は次のとおりです。- 4月分から9月分、または10月分から翌年3月分までの6ヶ月間
- 4月分から翌年3月分までの12ヶ月間
- 任意継続被保険者の資格を取得した月の翌月分から、9月分または翌年3月分までの期間
- 4月分または10月分から、任意継続被保険者の資格を喪失する月の前月分までの期間
まとめ
公的な医療保険は、ともすると保険料ばかり気になりがちですが、病気や怪我をしたときには本当にありがたいものです。 ご自身や大切な家族を守るために、暮らしに合った医療保険を選んでいただきたいと思います。合わせて読みたい関連記事
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