こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳 (@officeyuka) です。
標準報酬月額は、厚生年金保険や健康保険などにおける毎月の保険料や保険給付の額を算定する際にとても重要なものです。
またその標準報酬月額は、厚生年金保険と健康保険でその等級区分(毎月の報酬月額を当てはめやすいように区分したもの)が異なっています。
そしてこの度、2020年9月から厚生年金保険の方でその標準報酬月額の等級区分が上に一つ増えることになりました。
そこでこの記事では、厚生年金保険における標準報酬月額の上限が具体的にどのように改定されるのか、また実務上の注意事項をわかりやすく解説していきます。
▼標準報酬月額そのものについて知りたい方は次の記事がとても参考になります▼
2020年9月以降の改定内容
まず最初に、最も重要な今回改定される具体的な内容です。
これまでは、厚生年金保険における標準報酬月額の上限等級は第31級の62万円でしたが、2020年9月以降その上限が引き上げられ第32級の65万円が最上限となります。
と言っても、これだけではなんのことかさっぱりわからないと思うのでわかりやすく表にしてみます。
標準報酬月額は、簡単に言うと「毎月の給与(報酬月額)が〇〇万円から△△万円の人は、標準報酬月額は第◇級の◇◇万円」というように従業員ごとに異なる報酬月額を当てはめるためのものです。
その標準報酬月額の上限が上がったということは、当てはめられる報酬月額の上限が変わったということ。
わかりやすく具体例を挙げてみます。
- 改定前:第31級(標準報酬月額 620,000円)
- 改定後:第32級(標準報酬月額 650,000円)
例を見ていただいてもとわかると思うのですが、結局のところ今回の改定で影響を受けるのは毎月の給与が 635,000円以上 の方だけです。
もちろん、30級以下には何の変更もありません。
標準報酬月額の上限改定で注意すべき点
次に、厚生年金保険において標準報酬月額の上限が引き上げられるにあたって実際に注意すべき点を見ていきます。
何か手続きが必要なわけではない
仮に、今回の改定によって新しい等級に該当する被保険者の方が会社内にいらっしゃったとしても、会社側でなにかしらの手続きや届出をする必要はありません。
この場合、2020(令和2)年9月下旬以降に日本年金機構機構から「標準報酬改定通知書」というものが送られてきますのでご安心ください。
健康保険は関係ない
冒頭で厚生年金保険と健康保険では標準報酬月額の等級区分が異なっていることをお伝えしましたが、今回の改定はあくまでも厚生年金保険だけのものであり、健康保険にはまったく関係がありません。
そもそも健康保険の場合、一番上は第50級の139万円まであるので、厚生年金保険における標準報酬月額の上限をはるかに超えてしまっているのです。
実際にいつ納める保険料から変わる?
今回の改定でもっともご注意いただきたいのは、実際にいつ納める保険料から改定後の標準報酬月額を適用し、支払わなければならないかということです。
まず大前提として、厚生年金保険料は労使で折半した保険料を翌月末までに支払わなければならないというルールがあります。
そして今回の改定では、2020年9月の標準報酬月額から変更になります。
つまり、対象者については、2020年9月の標準報酬月額とそれに対応する厚生年金保険料を変更し、10月末日までに支払わなければならないということになります。
ちなみに、従業員の給与から保険料を控除する際は、前月の標準報酬月額にかかる保険料を給与から控除することができるとされています。
ただ、会社ごとに給与の締め日・支払日は異なるため自社が前月の厚生年金保険料をどのタイミングで控除しているかという点を十分確認してから改定をしていただくことをおすすめします。
まとめ
今回の改定は全従業員に影響があるというようなものではありませんが、保険料という「お金」に関わるものですからやはり慎重な対応が必要です。
ましてや対象者にとっては将来の年金額にも関わる大切なもの。
ぜひしっかりとご対応いただければと思います。
参考資料 : 厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定(日本年金機構)
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