こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳 (@officeyuka) です。
2019年4月から、労働条件の明示がFAX・電子メール・SNS等の電子的な方法でもできるようになりました。
なんて楽観的に考えていませんか?
実は、どんな場合でもOKというわけではありません。
そこで今回は、労働条件の通知を正しく行うための注意点と対応策をわかりやすく解説します。
前提となる「労働条件の明示義務」については、以下の記事を参考にしてくださいね。
改正内容
早速ですが、2019年4月に改正された労働条件の明示方法について解説していきます。
明示方法がFAX・メール・SNS等でも可能に
労働条件の明示方法は、これまでは書面の交付に限られていましたが、2019年4月からは以下の方法で明示することも認められます。
- FAX
- Eメールや、Yahoo!メール、Gmail等のWebメールサービス
- LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能
ただし!注意しなければならない重要な点がいくつかあります。
注意点① 労働者が希望した場合に限られる
この注意点は非常に重要です。
電子メール等で労働条件の明示ができるのは、あくまでも労働者が希望した場合だけです。
労働者の意向を確認せず、希望もしていないのに一方的に電子メール等で労働条件を明示した場合には、労働基準関係法令の違反となりますのでくれぐれもご注意ください。
注意点② 労働者が出力して書面を作成することができるものに限られる
この注意点も重要です。
電子メール等で労働条件をただ送ればいいのではなく、労働者側が出力して書面を作成できるものでなくてはなりません。
「出力して書面を作成できるもの」とは、紙に印刷したりPDFなどのデータとして保存できるものを指します。
もっと具体的に言うとこうなります。
- 【良い例】PDFなどの添付ファイルで送る
- 【悪い例】SNS本文に直接記載し、労働条件を細切れに明示
また、SMS(ショートメールサービス)等による明示は禁止はされていませんが、ファイルの添付ができなかったり文字数制限もあるので、望ましくないとされています。
注意点③ 労働者のブログや個人のホームページへの書き込みによる明示は不可
「電子メール等」とは、受信する相手を特定して情報を伝えるものでないといけません。
そのため、労働者のブログや個人のホームページへの書き込みによる明示は認められないのでご注意ください。
明示する内容が事実と異なってはダメ
今回の改正で「労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」という条文が新たに加わりました。
一般的に考えて「事実と違う労働条件を明示するのはダメでしょ」と思われるでしょうが、それを明文化した形です。
もし明示された労働条件が事実と相違する場合は、労働者側が即時に労働契約を解除することができますのでご注意ください。
法改正への対応策
以上の法改正を踏まえ、トラブルを未然に防止するための対応策をご紹介していきます。
印刷や保存がしやすいように添付ファイルで送る
注意点②でも書いたように、メール等で明示した労働条件は労働者側で出力して書面を作成できるものでなりません。
つまり、労働者が書面を作成しやすい方法で送る必要があるということです。
例えばLINEで労働条件を通知する場合、労働条件ごとに投稿すると印刷時に途切れる可能性もありますし、保存の方法も面倒です(できなくはありませんが)。
メールでも、メール本文に労働条件を直接記載すると、やはり印刷時に途切れる可能性が大きいです。
やはりPDFやWordなどの添付ファイル形式で送る方が労働者にとっても便利ですし、「印刷できない!」といったトラブルも防げるでしょう。
もしPDFやWord形式での労働条件通知書をお持ちでない場合は、厚生労働省のホームページから職種別のモデル労働条件通知書が無料ダウンロードできますのでご活用ください。
労働者に対して個別に確認・伝達する
面と向かって伝えても「言った」「言わない」でトラブルになるぐらいですから、労働者に対してより細かく丁寧に確認・伝達することがトラブル防止につながります。
具体的に確認・伝達した方がよいことは以下のとおりです。
- 本当に労働者が電子メール等による明示を希望したかを確認
- 労働条件が明示された電子メール等が本当に到達したかを確認
- できるかぎり出力して保存するように伝達
電子メールは受信拒否設定がされていると届きませんし、いつのまにか迷惑メールフォルダに振り分けられていたということもよくあります。
また、SNSなどの一部サービスでは情報の保存期間が限られている場合もあります。
このようなインターネット時代特有のトラブルを防ぐためにも、確認・伝達を怠りなく実施することが必要でしょう。
会社側が明示した日付や担当者名を記載
何事も「証拠を残す」ことがトラブル防止に欠かせません。
決して義務ではありませんが、以下のようなことを電子メール等を送信する際に記載しておくのが望ましいとされています。
- 明示した日付
- 送信した担当者の氏名
- 会社名や支店名
- 社長や上司となる者の名前
電子メールなら当たり前に記載することかもしれませんが、LINEなどのSNSでは意外と抜け落ちてしまいそうではありませんか?
労働者が「LINEで送ってほしい」と希望することもあるわけですから、どんな方法で明示するときでも忘れずに記載できるようにしておきたいものです。
まとめ
今回の法改正は、「書面でしか労働条件が明示できないのは時代にそぐわない」という声に応えたものです。
しかし、正しい方法で明示しないと、労働者に不安を与えることになったり、会社側に罰則が与えられることすらあります。
この記事を参考にし、自信をもって労働条件を明示できるようにしてくださいね。