MENU
ゆかねぇ(渡邊 由佳)
Gallup認定ストレングスコーチ・社会保険労務士CFP
愛知県西尾市を拠点に「強みの伝道師」として、一人でも多くの方が強みを活かして自分らしく生きていけるようストレングスファインダー(クリフトンストレングス)を使ったコーチングをしています。
カテゴリーから記事を探す
社労士としての未来、描きませんか? 詳しくはこちら

社会保険の適用事業所とは?適用事業所の種類や要件をわかりやすく解説

こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳  (@officeyuka) です。

適用事業所って言葉、イマイチピンとこないんだよね…。
言葉の意味はともかく、うちの会社は適用事業所なの?そうじゃないの?

「適用事業所」という言葉は、日常生活でそうそう使うものではありません。

ですが、従業員を雇って会社を経営していくにあたって「適用事業所」は必ず出てくる言葉でもあり、「自社が適用事業所か?そうでないか?」はとても重要です。

そこでこの記事では、適用事業所 についてわかりやすく解説すると同時に、特に社会保険について、どのような形態の会社が適用事業所なのか、そうでないのかもしっかりご紹介していきます。

適用事業所は「会社単位」のお話です。会社で働く「人単位」については「被保険者」のお話になります。ここを最初に押さえておくだけで全然違いますよ!
目次

適用事業所とは?

適用事業所について解説をしていく前に、まず「適用」という言葉について辞書を引いてみます。

てきよう【適用】

法律・規則・原理などをあてはめて用いること。

weblio辞書より引用

辞書からわかるように、適用には「あてはめる」という意味があります。

つまり、適用事業所とは「法律があてはめられる事業所」であり、さらにいうと「法律に書かれていることを守らなければならない会社」ということになります。

なるほどー。でも、適用事業所の範囲ってどの法律でも同じなの?

お!鋭い質問です。

実は「適用事業所」という単語があっても、法律によって「どこまでが適用事業所なのか」という範囲が少しずつ違うため、混乱してしまうんですね。

特に労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)とでは、その範囲はかなり違うと思っていただいて良いです。

労働保険の方は、正確には「適用事業」と言います。ややこしいですね…。

労働保険の適用事業については別の記事に譲り、ここからは社会保険の適用事業所について解説していきます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用事業所には、絶対に加入しなければならない強制適用事業所と、「入りたければ入ってもいいよ」という任意適用事業所の 2種類 があります。

それぞれ細かい要件がありますので、詳しく見ていきましょう。

強制適用事業所

強制適用事業所とは、事業主や従業員の意思にかかわらず、法律上当然に適用事業所となる事業所のことです。

要するに「いやだ、入りたくない」と言っても、加入しなければならないということ。

強制適用事業所 になるのは次の事業所です。

  1. 国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を(1人でも)使用するもの
  2. 個人経営である適用業種の事業の事業所であって、常時5人以上の従業員を使用するもの
  3. 【厚生年金保険のみ】船員法規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶

健康保険と厚生年金保険の適用事業所の範囲はほぼ同じですが、唯一「船舶」のみ取り扱いが異なります(厚生年金保険だけが適用事業所)。

ただ、現在船員の方の人数は非常に少ないため、申し訳ありませんがこの記事では解説を省略させていただきます。

では、①と②の要件をさらに深く見ていきます。

① 国、地方公共団体又は法人の事業所

国、地方公共団体、法人の事業所は、どんな業種であっても常時1人でも従業員を使用していれば 強制適用事業所 となります。

法人

ひとくちに「法人」と言ってもその形態は様々です。

ですが、ここでいう「法人」は、公法人、私法人、公益法人、営利法人、社団法人、財団法人など、いずれであるかは問われません。

常時1人でも従業員を使用

え?社長1人の会社でも社会保険に強制加入なの?

「従業員」と定義されているため「法人の代表者である『社長』は含まれない=強制適用事業所ではない」と考えてしまいそうになりますが、結論から言うと強制適用事業所になります

法人の代表者である社長は、形態としては法人から労働の対償として報酬を受けている」立場であり、その限りにおいて「従業員」と扱われます。

ですから、たとえ社長1人の会社であっても、法人であれば強制適用事業所となるのです。

反対に、個人事業主は事業所に使用される者(労働の対償として事業所から報酬を受ける者)ではないので、従業員とはカウントされず、社会保険に加入することもできません

② 個人経営である適用業種の事業の事業所

個人経営で、かつ 適用業種の事業 の事業所は、常時5人以上従業員を使用している場合は 強制適用事業所 となります。

個人経営

個人経営とは、法人ではなくいわゆる個人事業主として経営しているということです。

適用業種

また「適用」って出てきたよ。適用業種って何…。

「適用事業所とは?」でもお伝えしたとおり、適用とは「あてはめる」という意味でした。

つまり「法律に書かれている業種にあてはまれば強制適用事業所だよ」ということ。その業種は次の16業種です(表現は簡略化しています)。

適用業種

  1. 製造業
  2. 土木建築業
  3. 鉱業
  4. 電気・ガス業
  5. 運送・運輸業
  6. 貨物積み下ろし業
  7. 焼却・清掃・と殺業
  8. 物品販売業
  9. 金融保険業
  10. 保管賃貸業
  11. 媒介周旋業
  12. 集金・案内・広告業
  13. 教育・研究・調査業
  14. 医療事業
  15. 通信報道事業
  16. 社会福祉事業・更生保護事業



わかりにくい!もっとわかりやすく!

申し訳ありません!

では、適用業種より圧倒的に数が少ない「適用業種以外の業種(非適用業種)」をご紹介します。

非適用業種

  1. 農林水産業
  2. サービス業の一部(飲食店、旅館、理容・美容業等)
  3. 自由業(税理士、社会保険労務士等の事務所等)
  4. 宗教業(寺院・神社・教会等)

非適用業種に該当した場合は、たとえ従業員が常時5人以上いたとしても強制適用事業所にはなりません。

反対に、非適用業種に該当しないのであれば適用業種ですから、従業員が常時5人以上いれば強制適用事業所になる、というわけです。

常時5人以上

常時5人の「5人」って、正社員の数だけ数えればいいの?

鋭い質問ですね!

ここでいう「5人」は、その事業所に使用されるすべての方をカウントします。

ですので「週20時間未満で勤務しているパートさん」や「75歳以上で後期高齢者医療制度に加入している方」のように、そもそも社会保険に入れない方でも「常時使用されている」のであれば人数に加える必要があります。

また、「常時5人以上」の「常時」ですが、たとえ5人未満になったとしてもそれが一時的な現象である場合は「常時5人以上」と認められます。

強制適用事業所まとめ

ここまで強制適用事業所になる場合を見てきましたが、人数の違い や 適用業種といった表現 で少し頭が混乱してきたかと思うので、いったん表にまとめておきます。

常時使用する従業員数 適用業種(16種) 非適用業種
法人 1人以上 強制 強制
個人 5人以上 強制 強制でない
5人未満 強制でない 強制でない

任意適用事業所

これまでは強制適用事業所について見てきましたが、強制適用事業所に該当しないからといって社会保険に加入できないわけではありません。

強制適用事業所に該当しない事業所であっても、厚生労働大臣の認可を受けることによって適用事業所とすることができ、これを任意適用事業所といいます。

任意適用事業所になるためには

では、単に「適用事業所になりたいです!」と申請しただけで 任意適用事業所 になれるかというとやはりそうではなく、 任意適用事業所 になるためには次の要件を満たす必要があります。

  1. 事業所に使用される者(被保険者となるべき者に限る。)2分の1以上同意があること
  2. 事業主が認可の申請すること
  3. 厚生労働大臣の認可があること

① 2分の1以上の同意

任意適用事業所 になるためには従業員のうち2分の1以上の同意を得る必要がありますが、ここでの同意は被保険者になるべき人の2分の1以上の同意でなければなりません。

え?え?よくわからない。さっきは「全員」って言ってたような…。

ちょっと混乱してきましたね。一度整理してみましょう。

まず、「強制適用事業所になるかどうか」を判断する場合の人数(5人以上か未満か)は、社会保険の被保険者になってもならなくても「常時使用」されている方をすべてカウントしました。

しかし、任意適用事業所になるための同意は、最終的に会社が任意適用事業所になったときに、社会保険の被保険者になる方の数だけを分母にし、そのうち2分の1以上の同意であることが必要です。

わかりやすく図にしました。

会社が任意適用事業所になれば、被保険者の要件を満たす人は強制的に被保険者になります。

被保険者になるということは、病気になったときに負担が軽くて済むなどの恩恵がある一方、月々のお給料から社会保険料を支払う(負担する)という義務も負うということ。

つまり、社会保険制度の恩恵を受け、義務を負う方だけを同意の対象にするということなのです。

最終的に任意適用事業所になったときは、(そもそも被保険者になれない方を除き)同意をしなかった方も含めて全員が被保険者となります。

② 事業主の認可申請

事業所に使用される方の2分の1の同意があれば、事業主(会社)は任意適用事業所になるための認可申請を行うことができます。

が、「できます」と申し上げたように、2分の1の同意があったとしても認可申請は義務ではありません

認可申請をするかどうかは事業主の意思によります。

これはなぜかというと、社会保険料は従業員の方だけでなく会社にとっても負担の大きいものです。会社の規模が小さければなおさらでしょう。

ここでもし「加入を義務」としてしまうと、会社の財政を圧迫してしまう可能性もありますし、結果的に滞納となれば保険料を徴収する側も困ります。

たとえ健康保険や厚生年金保険に加入できなくても、国民健康保険や国民年金といった受け皿がありますから、事業主の認可申請は義務ではないということなのです。

③ 厚生労働大臣の認可

厚生労働大臣の認可があれば、任意適用事業所となります。

任意適用事業所になれば中身は適用事業所ですから、社会保険料を納める、各種届出を提出するなど、やることは通常の適用事業所(強制適用事業所)とまったく同じです。

任意適用事業所でなくするためには

強制適用事業所 は、事業主や従業員の意思によって勝手に適用事業所でなくすることはできません

しかし、任意適用事業所の場合は、次の要件を満たすことで任意適用事業所でなくする(取り消しをする)ことができます。

  1. 事業所に使用される者(被保険者である者に限る。)4分の3以上同意があること
  2. 事業主が認可の申請すること
  3. 厚生労働大臣の認可があること

任意適用事業所になるときの要件と異なるのは、被保険者の方のうち4分の3以上の同意が必要な点だけです。

最終的に厚生労働大臣の認可があれば、同意をしなかった方も含めて全員が被保険者の資格を喪失することになります。

まとめ

社会保険に加入するかどうかは、まず 会社単位 で判断し、次に会社で働く 人単位 で判断します。

今回の適用事業所のお話は、「会社単位」で社会保険に加入するかどうかという段階でした。

年々社会保険料の負担が増していますが、福利厚生の一つとして「社会保険に加入している」というのは、仕事を探すかたにとってもメリットがあり、人材の確保にもつながります。

要件を正しく理解し、会社の経営に役立てていただければと思います。

 

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コーチングを受けてみませんか?

「ストレングスファインダー診断を受けたけど結果を見てもよくわからない」「強みを活かして自分らしく生きたい」など、自分の強みをさらに知りたいなら、ぜひ一度コーチングを受けてみませんか?

お問い合わせだけでもお気軽にどうぞ。

目次