こんにちは、 社会保険労務士の 渡邊 由佳 (@officeyuka) です。
「働き方改革」は今や誰でも知っている言葉となりましたが、では「働き方改革とはそもそも何か?」をきちんと答えることは難しいのではないでしょうか。
そこで、今回は「働き方改革の基本の『き』」を、その背景も踏まえてわかりやすく解説します。
そもそも「働き方改革」ってなんだ?
まず、そもそも働き方改革とはなんなのでしょうか?
これは一言で言ってしまえば「働き方改革=一億総活躍社会実現に向けた改革」です。
[prpsay img=”https://officeyuka.com/wp-content/uploads/2019/01/ojisan3_question-2.png” name=”” from=”right”]うーん、ピンとこないなぁ[/prpsay]
それではちょっと厚生労働省のリーフレットから引用してみましょう。
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
厚生労働省リーフレット「働き方改革〜一億総活躍社会の実現に向けて〜」より
働く側の事情は様々です。にも関わらず現状の社会、現状の法律ではその事情に応じることができず「働きたいのに働けない」「休みたいのに休めない」という状況が生まれています。
その状況を改善し、個々の事情に応じた働き方ができる環境を作ろう、というのが働き方改革の目指すところなんですね。
働き方改革の背景
働き方改革が叫ばれるのには理由があります。次は、働き方改革が必要とされる背景に迫ってみます。
少子高齢化による生産年齢人口の減少
「少子高齢化が進んでいる」「人手不足が深刻」と言われても「ふ〜ん」で終わってしまっていることも多いかもしれませんが、働き方改革の背景にはこの2つが大きく関わっています。
ここで一つ、具体的な資料を見てみましょう。
この資料から次のような実態を読み取ることができます。
人口の減少
2015年時点において、日本の人口は約1億2000万人です。この人口は年々減り続け、50年後の2065年には9,000万人を割り込むと推計されています。
「50年先のことなんて」と思うかもしれませんが、15年後の2030年ですら今より1,000万人近く人口が減少すると予想されていますから決して他人事ではありません。
[prpsay img=”https://officeyuka.com/wp-content/uploads/2019/04/-e1556087488551.jpg” name=””]人口が減っていくなら1人あたりの生産性の向上が不可欠になってきますね。[/prpsay]
高齢者の増加
次に高齢者の割合を見てみます。
2015年時点で、高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)は26.6%です。これは言い換えると「国民の4人に1人が高齢者」ということになります。
それが50年後の2065年には高齢化率は38.4%まで増加し、なんと「国民の4割近くが65歳以上」という社会がやってくると推計されています。
[prpsay img=”https://officeyuka.com/wp-content/uploads/2019/04/-e1556087488551.jpg” name=””]「定年引き上げ」や「高齢者も働きやすい雇用環境作り」が進められているのはうなずけます。[/prpsay]
生産年齢人口割合の減少
「生産年齢人口」とは、労働する意思の有無に関わらず生産活動(労働)の中心となる人口のことで、日本では15歳〜64歳までを指します。
総人口が減り、65歳以上の高齢者が増えれば働き手である生産年齢人口が減るのは想像がつきますよね。
実際、2015年の生産年齢人口は60.7%ですが2065年には生産年齢人口が51.4%にまで減少すると推計されています。
[prpsay img=”https://officeyuka.com/wp-content/uploads/2019/04/-e1556087488551.jpg” name=””]生産性もさることながら、1人でも多くの人が働きやすい環境を整えなければなりません。[/prpsay]
このように、これからの日本は何もしなければ働き手は減っていく一方です。だからこそ、
- 働き手を増やす
- 1人あたりの生産性をあげる
- 働きやすい環境を整備する
ための改革が急がれているという背景があるんですね。
働き手のニーズの多様化
かつての日本は「働く=正社員としてフルタイム勤務」という考え方が主流でした(今でもそうかもしれませんが)。
そのためパートやアルバイト・派遣社員のようないわゆる「非正規雇用者」は、重要な仕事を任せてもらえなかったり、待遇面で大きな格差があったことも事実です。
しかし、今の時代は働く側のニーズも多様化してきており、それに応えていかなければ「働きたいのに働けない」人が増え、さらには「能力ある人を埋もれさせてしまう」ことにもなります。
ここでいくつか具体例をあげてみます。
女性の就業意識の変化
近年女性の社会進出は目覚ましいものがありますが、以下の表を見てもそれは明らかです。
就業率とは15歳以上で働いている人の率のことですが、女性はほぼ一貫して増え続けています。
また 平成29年度の労働経済白書 には、最近は単に家計補助的な意味合いで働くというよりも女性の就業そのものに対する意識の高まりが労働参加につながっていると書かれています。
しかし、何もかもがうまくいっているわけでありません。
以下の資料を見てください。
これは 女性の年齢階級別労働力率を示したものですが、他国と比べて日本は真ん中が凹んでいる(いわゆる「M字カーブ」)ことがわかります。
凹んでいるのはちょうど子育て世代である「25歳〜44歳」の年齢層。
さらに右のグラフでは「働きたいと思っている人」と「実際に働いている人」の差が子育て世代ほど大きく開いていることもわかります。
つまり、働きたい女性はたくさんいるのに「出産・育児」で退職を余儀なくされ、その後も望む働き方ができていないという実態があるというわけです。
育児だけではなく、近年は介護による離職も大きな問題となっています。
平成29年度の労働経済白書 によると、2012年(平成24年)に介護を理由として離職した方は10万人、介護を理由に求職活動を行なっていない方は19万人となっており、いずれも女性の割合が高くなっています。
この傾向は今後ますます強くなっていくでしょうし、「介護しながら働きたい」というニーズも増えていくことが予想されます。
出産・育児・介護のようなライフステージの変化にも対応できる社会を作り上げることは、働き手のニーズに応えるために今や必要不可欠の状況となっているのです。
高齢者の就業意識の変化
女性と同じくらい就業意識が変化しているのが高齢者です。
こちらのデータを見てください。
上のデータを見ると、平成25年の時点で65歳を超えてからも働きたいと回答した方が約7割を超えています。
「長生きはリスク」とさえ言われる今の時代ですから、将来への不安を抱える高齢者が多いのも事実でしょう。ですが「まだまだ働きたい、社会に貢献したい」と思っている高齢者も多いのではないかと思います。
そして下のデータですが、60歳以降の希望する就業形態としてパートタイム勤務がもっとも多くなっています。
高齢になれば心身ともに変化があり、フルタイム勤務が難しくなることは想像できます。「それでも働きたい」と思う高齢者のニーズに応えられる環境づくりは避けて通れません。
まとめ
この記事では「働き方改革とは?そして今改革が必要な背景とは?」をお伝えしてきました。
「働き方改革」と言うと法改正の内容ばかりが取りあげられ、「なぜ今働き方改革が必要なのか?」という部分がきちんと説明されていないように思います。
現状を知れば、働き方改革の必要性も見えてきます。
この記事がその助けになれば幸いです。
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